【労働生産性】労働生産性国際比較2022が発表されました!
2022/12/22 02:12
例年、主要先進国の中で低い水準で推移していた日本の労働生産性。人口減少が続く中、デジタル化も遅々として進まず、ポストコロナを見据えた持続可能な社会構築が急がれる中、日本国内でも労働生産性の改善や必要性、意義が叫ばれています。
そんな中、「労働生産性国際比較2022」が公表されたが、現在の日本企業の人材の生産性は改善されているものの、諸外国はそれ以上に改善、進化しており、順位の上では非常に低い水準となっています。
日本の労働生産性はどのあたりに?
12月19日、日本労働生産性本部は、「労働生産性の国際比較2022」を発表しました。
これによると、日本における2021年の時間あたりの労働生産性は49.9ドル(5,006円)となり、OECD加盟38か国中27位という結果となり、1970年以降最低の順位となりました。ただ、順位で言うと最低水準ですが、労働生産性という数値で見ると、経済成長が上向いたことで前年より実質ベースで1.5%上昇しています。
また、就業者1人あたりの労働生産性は81,510ドル(818万円)となっており、こちらもOECD加盟38か国中29位となっています。これはポーランド(861万円)、ハンガリー(770万円)、ニュージーランド(857万円)となっており、東欧諸国やニュージーランド、ポルトガルと同水準となっています。西欧と比べると、労働生産性水準が比較的低いとされる英国(1,018万円)やスペイン(981万円)より2割も低くなっていることから、先進国の中では最低レベルとなっています。
その他、日本の製造業の労働生産性は、92,993ドルでOECD加盟国38か国中で18位となっており順位は悪くないですが、数値は米国の6割、韓国とは同水準となっている。なお、2000年はOECD加盟国中1位であったことから、この20年で16位から19位あたりに低下してしまったのは、労働力の低下と労働生産性の効率化や向上が諸外国と比較して大きくは果たせていないと言えます。
一方、日本の時間あたりの名目労働生産性(時間あたり付加価値額)の上昇率は2年ぶりに+成長を見せており、改善傾向になっており、同じく1人あたりの名目労働生産性(就業者1人あたり付加価値額)も808万円と、前年比+2.2%の成長を見せており、96年から見ると大幅な改善幅を示しています。これらのことからも数値の改善は進んでいるが、進歩のスピードが諸外国より遅れている現状が浮かび上がります。
国民1人あたりのGDP国際比較
労働生産性の引き上げに大きな影響を与えるのが、国民1人あたりのGDP。現在の日本国民はどの水準にいるのか?
日本の1人あたりのGDPは国際比較順位ではOECD加盟38か国中24位。金額も43,595ドル(438万円)となっており、チェコ(44198ドル/444万円)やスロベニア(43,767ドル/439万円)、リトアニア(43,007ドル/433万円)と同水準にある。
いつからこうなってしまったのか?
96年にはOECD加盟38か国中5位にまで上昇し、G7では米国に次いで2位となっていた日本が、今では下位の常連となってしまっている。
そして、1人あたりのGDPの低下はそのまま労働生産性の低下にもつながっている。
今後は、人口減少や高齢化に負けず、労働者の能力向上、経営管理能力の向上・改善、さまざまな日本発のイノベーションにより労働生産性の改善を目指すことによって、経済は成長し国民1人あたりのGDPも上昇する。持続的な経済成長と経済的豊かさの追求のためには、労働生産性の改善は急ピッチに進む。
コロナ禍を経て主要国の労働生産性は変化しているか?
主要国をみると、2021 年になって新型コロナウイルスと共存しながら経済を正常化させようと方針を転換した国が多いが、2022 年に入るとロシアによるウクライナ侵攻 が資源価格の高騰やグローバルなサプライチェーンの動揺を誘発し、各国の物価も急 上昇している。
そして、インフレ抑制のために多くの国で中央銀行が金融引き締めに 転じるなど、主要国を取り巻く経済環境は激しい変化に見舞われている。
OECD.Stat の四半期データをもとに、コロナ禍が猛威を振るい始めた 2020 年 4~6 月 以降の労働生産性の変化(実質ベース前年同期比・就業者 1 人当たり)をみると、日本は 上昇率こそやや小幅であるものの、2021 年 4~6 月期から回復傾向が続いている。
足もとの 2022 年 7~9 月期は、前年同期比+1.3%と日米英独 4 カ国の中で最も高い上昇率 であった。もっとも、2021 年の労働生産性上昇率をみると、経済正常化で先行した米 英独の 3 カ国より概ね低位で推移してきたことから、足もとの労働生産性がコロナ前 (2019 年 7~9 月期)の 98.3%にとどまっている。
これは、英国とはほぼ同程度ではある ものの、コロナ前水準を概ね回復している米国(104.1%)やドイツ(100.7%)を下回る。
なお、米国は、コロナ禍で経済が減速した時期に雇用を削減したため、2020 年から 2021 年にかけて労働生産性が上昇していたが、このところ雇用が戻りつつあることを 背景に労働生産性上昇率がマイナスに転落している。
英国やドイツも、2021 年は概ね 日本よりも高い労働生産性上昇率で推移していたが、2022 年に入ると減速が鮮明に なっている。こうしてみると、足もとまでプラスの上昇率が比較的安定的に持続する 日本のトレンドは、米国とも英独とも異なっているとみることができる。