海外から採用する外国人と留学生の違いは?

2022/09/26 10:09

現在、日本に約25万人(令和3年5月時点)滞在する留学生、彼らは早ければ18歳から日本に来て学んでいるが、彼らと海外から就職や技能を学びに来ている海外人材とは何が異なるのだろうか?

コロナで減少傾向の留学生

コロナ前は30万人を超えていた留学生。政府の推進する30万人計画もあり、順調にその数を増やしていました。一方で、就職率を5割にするという目標も掲げていましたが、こちらは4割程度に留まっていました。これは留学生側の日本に行きたいというニーズは高かったのですが、日本で働きたいというニーズは高くなかったことと、企業側も留学生を積極的に採用する企業風土、受け入れ態勢が十分でなかったため、就職が進まなかった見られています。

また、他に就職率が低かったと考えられる原因としては、理系学生の割合が低かったことです。現在、留学生の文理割合は、9:1で文系圧倒的多数となっています。文系となると総合職という位置づけで企業に就職しますが、そうなると日本人と同様の年功序列式の教育制度に順応しつつ、ゆっくりと階段を上がるようなステップアップを進みます。

しかし、このやり方だと大学の専攻やスキルはある程度考慮されますが、あくまで人材配置は会社の考え。外国人の彼らには合理的に見えない配属先に配属されるケースが出てきます。また、日本企業特有の礼儀作法や空気を読むという考え方、目上を立てる文化など外国人にわかりにくい文化がさらに複雑にします。

そして、これに適応できなかった前例ができると、既存の日本人社員も「やはり外国人は難しい」、「自己アピールはすごいがまだ早い」など異分子としの扱いになりがちです。そしてこれらの情報は外国人同士のSNSでは頻繁にやり取りされてますし、すでにアルバイトなどを通じてそういったことを体験した外国人留学生は、日本での就職を諦める、または興味をなくす方々も多いのが現状です。

せめて理系学生であれば、もちろん文化への適応は求められますが、スキルや知識、技術を見せることである程度理解を得やすく、多少適応に時間を要しても、ある程度教育期間として考慮してもらえます。ところが、スキルや知識がわかりにくい文系卒社員は、まず組織への順応性や日本語力を高めに求められますから、やはり「続かない」といった現象を招いています。

増えている海外人材

他方、海外人材はどうかというと、留学生と違い、初めて日本に入国する在留資格が比較的得やすい留学ではなく、「技能実習」や「特定技能」「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」などですから、技能実習や特定技能なら制度に沿った資格該当性、技人国なら戦力としての専門的技術及び知識を求められますので、学びに来る留学生とはハードルが異なります。

また、背景として、技能実習や特定技能は学歴を強く求められませんが、技人国は短大卒(専門職大学)以上の大卒資格、または10年以上の専門経験を求められます。また、それに伴う入国審査も厳しめです。そのため、海外から来る人材や学生は技術系や理系学生、専門的専攻(例:ロジスティックスなど)に偏りやすくなります。

特に、技人国の在留資格の人材は、学歴や職歴を問われますから、母国の厳しい受験競争を勝ち抜いている学生も多く、また、母国で就職していた人材は、競争激しい国内の企業間競争や企業内競争の経験があるので、メンタル的には強い人材が多いのも特徴です。

昨今は、これらのスキルや素養、メンタル耐性を求める企業も増えており、同時に海外法人を持つ企業も増えているので、国内で育成、適応後、海外法人へ派遣するという戦略の下、海外人材の採用活動を展開する企業も増えています。

businessman meeting on the city of Singapore

結局、留学生 or 海外人材どちらが良いのか?

これは答えがない質問ですが、採用目的と配属先、それぞれの特徴を考慮した上で、採用を行うのが適していると考えられます。

簡単にいうと、総合職は日本語力を求められるケースが多いので比較的に留学生で進めていき、技術系社員や技能系職員は、海外人材での採用を検討していくというのが最適解と思われます。

ただ、総合職でも海外法人や海外代理店とのやり取りや交渉、時には出張して説得やチェック、技能指導がなどが求められる場合には、総合職でも海外人材を積極的に採用してくべきでしょう。

やはり海外のことはその母国で大学を卒業したこと、企業に勤めていたこと、事業をしていたことなどは重要なファクターとなります。なぜなら、例えばアジアのある国を母国とした場合、現地のビジネスは相当数がネットワークを頼りにすることが多くなります。

また、現地従業員の働く心理や機微に長けている人材も多く、現地指導や駐在員として赴任した場合も、適応期間なく順応し能力を発揮することが期待できます。これらはなかなか外国人である日本人社員や早ければ18歳から日本にいる留学生にはできにくいことです。

ですので、採用目的や求める配属先の特徴が最も重要なので、その採用目的に準じて、国内から採用するか、海外から採用するかを戦略的に判断することが求められてくるでしょう。

【運営会社】株式会社セレッジ

代表菅野の素顔
菅野 直純
76年大阪生まれ。04年から外国人採用事業をスタートし16年以上外国人採用分野に携わる。2010年から14年まで中国最大(世界4位)の人材総合サービス企業中智上海グループに数少ない日本人としてJoin。12年に日企人事倶楽部設立。帰国後、外国人エンジニア人材採用/管理事業を展開。