【日本型雇用の転換点】ジョブ型雇用の動向
2022/06/13 10:06
欧米型人事制度であるジョブ型雇用。導入を提唱して早2年、その動向とは?
ジョブ型雇用の提唱
日本の従来からの雇用体系を、よく「メンバーシップ型雇用」と呼びます。なぜ、メンバーシップ型と呼ばれるのかと言うと、ジョブ型雇用が職務に対して人を付ける「就職」型であるのに対して、メンバーシップ型は、人を採用してから適正に合わせて職務を付けるという「就社」方式であるためです。
今、このメンバーシップ型雇用が転換点を迎えています。大企業をはじめとする多くの企業が、ジョブ型雇用を導入しはじめているのです。
では、なぜ、多くの企業はメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ転換を進めているのでしょうか?
そのためにはメンバーシップ型雇用から振り返らないといけません。
日本企業の中心人事体系であるメンバーシップ型雇用とは?
メンバーシップ型雇用は、まず初めに「人」の採用から始めます。その代表的な採用手段として、「新卒一括採用」があります。この制度がメンバーシップ型の基本ですが、そうして一度に採用した社員を、異動や転勤、海外派遣、ジョブローテーションを繰り返し、成長を促し、企業にとって貢献度の高い人材へ育てていきます。
そして、「終身雇用」や「年功序列型」などもメンバーシップ型の特徴にありますが、これも必然のものとして導入されます。こうして、会社というファミリーに所属し、その中での成長や昇進などのキャリアを考える人事体系が構築されていきます。
当然、キャリアは自分で考えるものではなく、会社が考えるというスタンスになります。また、企業文化も共有するので、一定の適応期間を経れば、全員同じ文化的思考や社風を共有できます。
こうした仕組みは、市場が成長する中で、大きな変化を求めない場合は量とビジョンの共有によるパワーの発揮で、とても強い組織力となるのですが、時代の変化や急激な変化には脆いのが特徴です。
昨今、情報革命に始まる情報化社会の進展により、グローバル環境も激変し、多くのグローバル企業が市場に登場する中で、それに伴う人材の獲得競争も激しくなりました。市場競争も激しくなり、プラットフォームの変化による技術変化のスピードも早く、従来通りのやり方では商機を逃す可能性が高まってきました。
そこで変化に強い有事に強い組織体系として、ジョブ型雇用が注目され始めたのです。
ジョブ型雇用の強みとは?
ジョブ型雇用は、基本的に職務に「人」を付けます。つまり、職務に応じて人を入れ替えることができます。これにより、時代の変化や市場の変化に合わせて変化する職務に合わせて人材を採用、更新することができるのです。
これにより、組織は市場変化に合わせた柔軟な採用が可能となり、市場成長に容易にリンクすることが可能となります。
多くは欧米企業やアジアの中国系企業がジョブ型雇用を取り入れており、職務に応じた給与設定ができる強みを活かし、多くの優秀な人材を抱えることに成功しています。
これと正反対だったのが、日本企業でありました。今後の市場変化を考えると、ジョブ型雇用への転換は必然であったと言えるでしょう。
ジョブ型雇用の動向は?
経団連がジョブ型雇用を提唱して早2年が経ちました。その間、大手企業各社でも導入に向けた動きが活発化しています。ただ、雇用の流動性が低いことによる課題も浮き上がってきています。
基本的に、ジョブ型雇用を導入する際、職務やそれに必要なスキルなどを明確にします。そして、そのスキルや経験に社内に該当する人材がいなければ、外部から人材を招聘します。これにより、順番待ち人事や年功による処遇は排除されます。
今後のデジタル化やグローバル化への対策として企業の関心も高くなっています。
日本ではハイブリッド式の導入が進んでおり、一部企業では、管理職層のポストをジョブ型雇用とし、JD(ジョブディスクリプション:職務記述書)を作成し、職務を明確にしている。ただし、職能を必要とする非管理職層は導入を段階的に進めるなどの調整を入れている。
こうした取り組みは、社員の自律的キャリア形成を促すことになる。なぜなら、ジョブ型雇用における職務やポストは、それを狙う従業員に自己研鑽を促すことになるからだ。このためにAIによる個人への最適な学習コンテンツを推奨するシステムを導入する企業もあるほどだ。
また、職能を求める非管理職層には、職務遂行能力に応じた段階的な昇給・昇格を行う職能等級制度残している企業もあるので、これがハイブリッドという呼称に繋がっている。
ポジションごとに人材の需給状況に合わせた「市場価格」を設定する欧米流のやり方になるまでにはまだ時間が必要と言えるだろう。