【定着課題】なぜ、外国人は転職すると言われているのか?
2022/06/13 10:06
今や170万人を超える外国人が日本社会で活躍しているが、一方で「よく転職する(ジョブホップする)」とも聞き、これが企業の人事課題ともなっている。では、そもそもなぜ外国人は日本人と比べて転職するのか?それを紐解いていこう。
転職が非日常から日常に変わった日本人
「年功序列の終身雇用」、これが戦後日本企業の画期的な人事制度だったが、この30年、これらの組織体制は崩れ始めている。ではなぜ、崩れてきたのか?
そもそも高校卒業、または大学卒業を控える時期、多くの日本人は『就職活動』というライフイベントを特に疑問もなく受け止めて活動している。
名だたる有名企業に入るチャンスを得るために、学生時代は多くの課外活動や部活活動を行い、それらを実績としたヒューマンスキルや学歴を売り込むことで、自分の希望する企業へ内定をもらう。このイベント時期を逃すと、なかなかリスタートが効かなくなるので必死になるのだが、それが従来の日本企業の就職環境だった。
ところが、2000年代に入り、多くの転職エージェントや人材派遣会社が転職機会や派遣の機会(派遣社員で様々な仕事を経験できる)を提供するようになり、そういった機会を求めて「転職」というものが当たり前になった。
また、バブル期以降、競争力を伸ばすことが難しくなった日本企業が、終身雇用を維持できないようになり、出世が見込めない人材や能力が発揮できない人材を出向や早期退職などで組織の外に出すようになった。同時に、海外企業(特に韓国、台湾、中国など)の競争力向上と、ものづくり企業の衰退もあり、以前のような市場成長を前提とした人事制度は重しとなっていったのである。
これらの環境変化が日本人の若手に及ぼす影響は大きく、今や新卒社員の3年以内の離職率は中卒7・高卒5・大卒3と話題になるほどだ。大卒は、すでに就職3年以内に求人サイトに登録する割合が4割を超えているというデータもある。つまり、日本人社員も転職が当たり前になったのである。
ただ、日本人社員もこういった上記の状況なのに、どういうわけか外国人は転職するというイメージが付いた。
外国人は違う人事制度で生きてきた
外国人は、日本に18歳からきている留学生や海外の大学を出たばかりの新卒を除けば、基本的に母国、または第3国の企業での勤務経験がある。その場合、ほとんどはジョブ型人事制度になっている。
外国人が転職を考える背景にはココがある。そして、これを相互に教えていない外国人斡旋業者などにも問題がある。
では、そのジョブ型人事制度だった場合、何が要点となるのか?
大きく3点になる。
1、専門性が強い
2、熟練評価が低い
3、個人の強みを見つけ、それを組織への貢献で最大化させる
まず、1の専門性が強いとは、スペシャリスト思考だということ。海外では学歴が大きな要素を占めるが、学生時代から何を専攻してきたかは重要な要素になる。そのため、就職時もその専攻を活かした職種に就くケースが多い。企業もそれを強みとしてジョブディスクリプション(職務記述書)を作成する。
2は、他の記事でも書いたが、彼ら外国人が母国、または第3国の企業で評価されるジョブ型人事制度の場合、「熟練」に対する評価による給与の伸びは20%-30%程度しか期待できない。しかし、日本では熟練による評価は職能評価においては大きなウェイトを占める。熟練=年数にも直結するからだ。
そのため、評価は成果で上げつつ、ポジション(役職や役割の名称)を上げることに集中する。海外ではポジションごとに給与やボーナス、インセンティブが明記されており、わかりやすく給与を上げる方法でもある。
これらの背景から、外国人はポジションがなかなか上がらない(日本企業は10年単位で役職が上がる)ため、それ以外の手段として転職が最も給与を向上させる手段と捉えており、ある程度の経験値と実績を上げることにより、転職を志向する。
逆にいうと、キャリアパスを会社側とともに設計することにより、それらを防止することにも繋がる。
以上のように、外国人の転職志向は、その人物が育った背景とも関連しており、一概に言えるものではないが、人事担当者は定着も考えると、知っておかなければいけない要素と言えるだろう。