【外国人管理者スキル編】外国人社員の不満を把握する/日本人管理者のマネジメントスキルを把握する
2022/06/13 10:06
株式会社パーソル総合研究所の「日本で働く外国人材の就業実態・意識調査」によると、国内で働く外国人社員には以下のような不満があることが分かった。
傾向として分かるのは、「機会の平等」と「報酬」の不足を感じている部分で、ジョブ型が主体の海外の人事では当たり前の事が、日本企業では求めにくい事が影響している。これはアフターコロナを迎える日本にとって、解決すべき課題といえる。また、同様の不満を多くの日本人の若年層も感じている事は抑えておく必要がある。
また、その不満と連動するのが日本人上司の存在。その日本人上司の選定についても、後半にご紹介する。
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TOP10に入る不満を自社がいかに解消できるかがキーとなる。すぐに給与などに反映させるとなると、人事評価制度そのものの見直しを求められることから、まずはできるところからの改革が着手しやすい。
その中で、「管理職の意思決定の裁量」「評価基準の明確化」「業務範囲の明確化」「無駄な会議が多い」などは着手しやすい部分かと思われる。だが、その前に誰を管理者に据えるかは、実は重要。管理者の異文化理解力・管理力(クロスカルチャーマネジメント力)は、ダイバーシティで成果を見せている人材などは有効。逆に離職率が高い管理者は、「離職率が高い要素」を見直す必要がある。
まずは「異文化に強い管理者の選定」が求められる。異文化に強い管理者とは、国際経験、地方赴任経験や履歴、他業界経験など国籍、地域、業界などのカルチャーの違いに適合してきた経歴から判断できる。赴任歴が短い、実績が見えないなどは経験があっても異文化に弱い可能性がある。そして、実は駐在員もこの管理者に求められるスキルが必要と考えられる。
出典:株式会社パーソル総合研究所「日本で働く外国人材の就業実態・意識調査」より引用
入社前と入社後のイメージギャップ
外国籍社員に入社前に想定していたイメージとのギャップを聞いたところ、1位は「住宅や生活全般に関するサポート体制」と回答、2位は「昇進・昇格のスピード」となった。住宅や生活全般のサポートは企業努力で解決可能なので、外国人採用に慣れている企業ほどこの着手は早い。
ただ、2位の「昇進・昇格の遅さ」は不満調査でも挙がっており、外国人の定着や活躍を望むのであれば対応が必要と考えられる。中小企業ほど成長機会を提供する事が多くできるので、それと評価を連動させて早めの昇進機会を設ける事は経営者や人事部で対応できると考えられる。
出典:株式会社パーソル総合研究所「日本で働く外国人材の就業実態・意識調査」より引用
外国人への日本人上司のマネジメント評価
調査の結果、外国人に対する日本人上司のマネジメントの課題が浮き彫りになった。そして、外国人上司と比較して、日本人上司への不満は約2倍となった。
これは体系的にリーダーシップを学ぶ機会が多い外国人上司と、役職を得てから学び始める日本人上司のリーダーシップスキルの習得差や経験値が表れているといえる。
また、個性を発揮する事が求められる専門家集合型の海外チームリーダーシップと、連体感を重視する日本のリーダーシップでは相違点が多く、これが戸惑う部分を与えているとも言える。
データからも日本人上司の「変化を嫌う」「メンバーからのアイデアや意見を嫌う」傾向が読み取れる。また、業務説明や成果の説明などを見ても、論理的に説明することを苦手としている。「なぜ〜なる」「だから〜する」などの論理的な説明を得意とする外国人上司に慣れた人材からすると、情緒的な上司に映るのは注意が必要だ。
別の表では、最終学歴別で日本人上司の評価を聞いたところ、「変化を嫌う」「長時間働く人を評価する」「定期的に話を聞いてくれない」「アイデアや意見を聞かない」など修士以上の学位者は大卒者の2倍以上、厳しい見方をしている事がわかった。
今後の日本人管理者の選定において、これらの指標は重要であり、固定の日本人マネジメントや閉鎖的な部活のマネジメントしか経験していない人材には、ダイバーシティマネジメントやクロスカルチャー教育は必要と思われる。
この管理者次第で、経営戦略でもある外国人社員の定着・活躍の成否がかかっていると言っても過言ではない。経営者の戦略、決定、方針をダメにするかどうかも管理者次第なのだ。
出典:株式会社パーソル総合研究所「日本で働く外国人材の就業実態・意識調査」より引用